投稿日:2026年3月3日
2026年2月末、中東情勢が急速に緊迫しました。
米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃が始まり、今後の情勢によっては、原油や天然ガスの供給、国際物流、原材料価格などに広範な影響が及ぶ可能性があります。
日本から遠く離れた地域で発生した出来事であっても、エネルギーや物流を通じて、日本企業の仕入れ価格や製造コストへ影響することがあります。
特に、海外で商品を生産し、日本へ輸入する企業にとって、中東情勢は決して無関係ではありません。
今後は、商品の製造単価だけでなく、原材料、包装、輸送、為替、納期などを含めた総合的なコスト管理が、これまで以上に重要になると考えられます。
ホルムズ海峡が持つ重要性
中東には、世界のエネルギー供給にとって重要な海上輸送路があります。
その代表的なものが、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶホルムズ海峡です。
米国エネルギー情報局によると、2024年から2025年第1四半期にホルムズ海峡を通過した石油は、世界の海上石油取引の4分の1以上、世界の石油・石油製品消費量のおよそ5分の1に相当します。
また、2024年には世界の液化天然ガス取引のおよそ20%が、ホルムズ海峡を通過しました。
この海域で船舶の通航が制限されたり、保険料や警備費用が上昇したりすれば、実際に供給が止まらなくても、市場では将来の供給不足を警戒する動きが強まります。
その結果、原油、天然ガス、船舶燃料、輸送費などが上昇する可能性があります。
エネルギー価格の上昇は多くの商品に影響する
原油価格の上昇は、ガソリンや電気料金だけの問題ではありません。
原油や天然ガスは、社会を動かすエネルギーであると同時に、多くの工業製品を作るための原料でもあります。
例えば、以下のような商品や材料は、エネルギー価格や石油化学原料の影響を受けることがあります。
- プラスチック製品
- PVC製品
- アクリル関連材料
- 合成繊維
- 接着剤
- 塗料
- 印刷インキ
- 包装フィルム
- 緩衝材
- 段ボール
- 輸送用資材
原料そのものの価格が上がるだけでなく、材料を加工する工場の電力費や燃料費も上昇します。
さらに、完成した商品を工場から港へ運び、船や航空機で日本へ輸送し、国内の倉庫や納品先へ配送するまでにもエネルギーが必要です。
そのため、エネルギー価格の上昇は、サプライチェーンの各段階へ連鎖的に広がる可能性があります。
国際物流への影響
中東情勢が緊迫すると、船会社や保険会社は航行上のリスクを再評価します。
危険度が高いと判断された海域では、次のような費用が増加する可能性があります。
- 船舶保険料
- 戦争危険割増料
- 燃料サーチャージ
- 港湾関連費用
- 警備費用
- 迂回航路による追加運航費
- コンテナ運賃
- 航空貨物運賃
船舶が危険海域を避けて遠回りをすれば、輸送日数が長くなり、使用する燃料も増えます。
また、限られた船舶やコンテナへ需要が集中すれば、直接中東を通らない航路であっても、国際運賃が上昇することがあります。
物流は、特定の地域だけで独立しているものではありません。
世界中の船舶、港湾、コンテナ、航空貨物が相互につながっているため、一つの地域で発生した混乱が、別の地域の輸送能力や運賃にも影響する可能性があります。
中国生産も無関係ではない
当社が取り扱うOEM商品には、中国の工場で生産し、日本へ輸入するものが多くあります。
中国から日本への主要な海上輸送ルートは、通常、ホルムズ海峡を直接通過するものではありません。
しかし、中国の工場も、電力、燃料、化学原料、包装材料、物流サービスなどを利用しています。
世界のエネルギー価格が上昇すれば、中国国内の製造費や輸送費に影響が及ぶ可能性があります。
また、国際物流市場全体が混乱すれば、中国と日本の間の輸送についても、船舶の配船、コンテナ供給、運賃、納期などが変化する場合があります。
したがって、「中国から日本への輸送だから中東情勢の影響を受けない」と単純に判断することはできません。
商品が完成するまでに、どのような材料とエネルギーが使われ、どのような物流網を経由しているかを考える必要があります。
為替変動にも注意が必要
原油や多くの国際商品は、米ドル建てで取引されています。
そのため、日本企業が実際に負担する価格は、国際市場での原料価格だけでなく、円と米ドルの為替相場によっても変わります。
仮に国際価格が同じであっても、円安が進めば、円換算後の仕入れ価格は上昇します。
反対に円高が進めば、輸入コストの一部が軽減される可能性があります。
ただし、国際的な緊張が高まった際に、為替市場がどの方向へ動くかを確実に予測することは困難です。
企業には、特定の為替水準だけを前提とせず、一定の変動を想定した見積もりや資金計画が求められます。
中小企業が直面する難しい判断
原材料費や物流費が上昇した場合、企業には主に三つの対応が考えられます。
一つ目は、増加したコストを自社の利益で吸収することです。
しかし、長期間にわたってコスト上昇を吸収し続ければ、企業の利益が減少し、設備投資、商品開発、人材育成などが難しくなります。
二つ目は、販売価格を引き上げることです。
企業経営を維持するために必要な対応であっても、価格が上がれば、顧客の購入判断や販売数量に影響する可能性があります。
三つ目は、商品仕様や生産方法を見直すことです。
材料、サイズ、厚み、構造、包装、発注数量、輸送方法などを変更することで、品質を大きく損なわずにコストを抑えられる場合があります。
重要なのは、値下げだけを工場へ要求することではありません。
無理な値下げは、材料品質の低下、工程の省略、検品不足、不良品の増加などにつながる可能性があります。
早めの生産計画が重要
国際情勢が不安定な時期には、通常よりも余裕を持って生産計画を立てる必要があります。
特に、販売開始日、イベント、キャンペーン、発売日などが決まっている商品では、物流の遅れが大きな損失につながります。
通常時には問題なく利用できた輸送方法でも、急な運賃上昇、減便、港湾混雑などにより、予定どおりに商品が到着しない可能性があります。
早めに計画を立てることで、次のような選択肢を検討しやすくなります。
- 船便を利用する
- 一部の商品だけ航空便を利用する
- 生産ロットを分割する
- 複数回に分けて出荷する
- 包装サイズを小さくする
- 輸送効率の良い梱包へ変更する
- 代替材料を確認する
- 複数の工場から見積もりを取得する
納期に余裕がなければ、選択できる輸送方法が限られ、結果として高額な航空便を利用しなければならない場合があります。
製造費を数%削減しても、緊急輸送によって物流費が大幅に増加すれば、総コストはかえって高くなります。
見積もり条件の明確化
為替、原材料、物流費が短期間で変動する状況では、見積書を長期間同じ条件で維持することが難しくなります。
そのため、企業は見積書の有効期限や価格条件を明確にする必要があります。
例えば、次のような内容を事前に確認することが重要です。
- 見積書の有効期限
- 適用する為替レート
- 原材料価格が変動した場合の対応
- 海上運賃や航空運賃の扱い
- 関税、輸入消費税、通関費用
- 緊急輸送が必要になった場合の費用
- 発注後の仕様変更に伴う費用
- 分納や保管が必要な場合の費用
価格変更について後から突然説明するのではなく、見積もりの段階で変動の可能性を共有することで、発注者と製造側の双方が計画を立てやすくなります。
在庫にも両面のリスクがある
供給不足を心配して在庫を増やすことは、一つの対策です。
しかし、在庫を多く持てば、保管費、資金負担、商品の劣化、デザイン変更、売れ残りなどのリスクが増えます。
反対に、在庫を極端に減らせば、物流が遅れた際に販売機会を失う可能性があります。
したがって、すべての商品を大量に在庫するのではなく、重要度に応じて管理方法を変える必要があります。
例えば、以下のように分類する方法があります。
- 継続的に販売する定番商品
- 納期の長い商品
- 代替材料が少ない商品
- 販売期間が限定される商品
- 季節商品
- イベント商品
- 少量で追加生産しやすい商品
定番商品や調達に時間がかかる商品については、一定の安全在庫を持つことが有効です。
一方、販売期間が短い商品については、在庫を増やしすぎない慎重な判断が必要です。
品質を維持しながらコストを見直す
コストが上昇した際、最も注意しなければならないのは、品質管理を削減対象にしてしまうことです。
検品を減らせば、一時的に費用を抑えられるように見えるかもしれません。
しかし、不良品が日本へ到着した後に発見されれば、返品、再検品、再生産、追加輸送、顧客対応など、より大きな費用が発生します。
特に海外生産では、不良品を日本から工場へ返送し、再び納品するまでに長い時間が必要です。
品質問題によって販売時期を逃せば、金額だけでは補えない損失が発生することもあります。
コストを見直す場合には、必要な品質を明確にしたうえで、無駄な工程、過剰包装、非効率な梱包、不要な付属品などを改善することが重要です。
企業に求められる供給網の強靱化
今回の中東情勢は、企業が国際的な供給網について改めて考える機会でもあります。
世界情勢は、一つの企業の努力でコントロールできるものではありません。
しかし、問題が発生した場合に備えて、次のような準備を進めることはできます。
- 複数の仕入先を確認する
- 代替可能な材料を調べる
- 別の製造工場を確保する
- 複数の物流会社と連携する
- 輸送方法を複数準備する
- 生産と物流に余裕を持たせる
- 重要商品には安全在庫を設定する
- 見積もり条件を明確にする
- 品質基準を文書化する
ただし、生産先を増やせば、それだけで供給網が安定するわけではありません。
新しい工場では、品質基準、作業方法、納期管理などを改めて確認する必要があります。
供給網の強靱化とは、単に工場の数を増やすことではなく、どの工場でも一定の品質を維持できる管理体制を整えることです。
総合的なコストで判断する
商品製造では、工場が提示する単価が最も分かりやすい数字です。
しかし、実際に必要となる費用は、それだけではありません。
商品の総コストには、次のような項目が含まれます。
- 材料費
- 加工費
- 試作費
- 印刷費
- 包装費
- 検品費
- 中国国内輸送費
- 国際輸送費
- 通関費用
- 日本国内配送費
- 保管費
- 不良品対応費
- 再生産費
- 資金負担
製造単価が安い工場でも、不良率が高く、納期が不安定であれば、最終的な費用は高くなる可能性があります。
反対に、単価が多少高くても、品質が安定し、予定どおりに納品できる工場の方が、総合的には有利な場合があります。
国際情勢が不安定な時期ほど、一つの数字だけではなく、商品が顧客へ届くまでの全体を見て判断する必要があります。
変化に対応できる商品づくりを
中東情勢が今後どのように展開するかを、現時点で正確に予測することはできません。
原油や天然ガスの供給、為替、物流がどの程度影響を受けるかも、情勢の長期化や海上輸送路の状況によって変わります。
そのため、企業に必要なのは、最悪の事態を過度に恐れることでも、影響がないと楽観視することでもありません。
複数の可能性を想定し、必要な情報を確認しながら、現実的な準備を進めることが重要です。
株式会社デイリープラネットジャパンでは、中国における商品製造と品質管理の経験を活かし、企画、製造、検品、物流、納品までを一貫してサポートしています。
原材料価格、為替、物流費などが変化する中でも、お客様の商品に適した材料、製造方法、梱包方法、輸送方法を総合的に検討してまいります。
単に最も安い方法を選ぶのではなく、品質、納期、価格、供給の安定性を考慮し、お客様に安心してご依頼いただける商品づくりを目指します。
国際情勢が不安定な時代だからこそ、変化へ柔軟に対応できる製造体制と、信頼できるサプライチェーンが重要であると考えています。
#国際情勢
#中東情勢
#イラン
#エネルギー価格
#原材料価格
#物流費
#ホルムズ海峡
#サプライチェーン
#海外生産
#中国生産
#OEM製造
#品質管理
#デイリープラネットジャパン
